皆さんが日頃当たり前のように使っている水道の設備は「どこまでが誰の所有物か知っていますか?」「誰が維持管理するか知っていますか?」「水が漏れた時の修繕は誰がするか知っていますか?」
本記事では、このような疑問を解決するために、 「水道管の維持管理の区分」と「水漏れした際の個人の修繕範囲」についてわかりやすく書いていきます。
水道管は誰が維持管理する?
水道管の所有者は誰なのか、維持管理は誰が行うのか法律や条例に基づいて解説していきます。
水道法
水道に関する法律は水道法に記載されております。その水道法で水道管の維持管理は第3条第8項及び第9項、第14条第1項で以下のように定義付けられています。
(用語の定義)
第3条
8 この法律において「水道施設」とは、水道のための取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設及び配水施設(専用水道にあつては、給水の施設を含むものとし、建築物に設けられたものを除く。以下同じ。)であつて、当該水道事業者、水道用水供給事業者又は専用水道の設置者の管理に属するものをいう。9 この法律において「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。
(供給規程) 第14条 水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない。
引用元:水道法
書いていることが難しいですよね…。わかりやすく書くと、以下の通りです。
・道路に埋設している水道本管は、各市町村の水道局が維持管理する。
・水道局所有の配水管から、個人宅などへ水を供給するために取り付ける設備をまとめて給水装置という。
・各市町村の水道局は、給水装置を個人宅などへ引き込む際の供給方法や水道料金などを条例で定めないといけない。
水道法では、水道本管は水道局がすべて管理し、給水装置は各市町村が条例で条件を定めるということがわかりました。
では給水装置の条例にはどのようなことが書いているのでしょうか。
給水条例
水道についての主だったことは、前述の水道法に記載されておりますが、給水装置についての条例は市町村で定めないといけません。
本記事では大阪市の給水条例で給水装置の所有者と維持管理について書いてある部分を抜き出しました。なお、他の市町村でも多少書き方は違いますが、書いている内容はほぼ同じとなっております。
大阪市の給水条例では、給水装置の管理は第17条第1項~第6項に定義されております。
(給水装置の管理)
第17条 使用者又は所有者は、善良な管理者の注意をもつて給水装置を管理しなければならない。
引用元:大阪市水道事業給水条例
2 使用者又は所有者は、水質に異常があると認めるときは、直ちに市に届け出なければならない。
3 使用者又は所有者は、給水装置に異常があると認めるときは、直ちに市又は指定給水装置工事事業者に修繕その他必要な処置を申し込まなければならない。
4 局長が必要と認めるときは、第2項の届出又は前項の申込みがなくても修繕その他必要な処置をすることができる。
5 前2項の修繕その他必要な処置に要した費用は、使用者又は所有者の負担とする。ただし、局長が特別の事由があると認めるときは、この限りでない。
この条例の重要な点をわかりやすく書くと、以下の通りです。
・給水装置は、その使用者や所有者が維持管理をする。
・給水装置を修繕する費用は使用者または所有者の負担とする。
給水条例を見ると、給水装置は使用者または所有者がすべて維持管理する必要があるということがわかりました。
維持管理区分まとめ
水道管の区分についてわかりやすく書いてある絵がありましたので参考にして下さい。

この絵を見るとイメージが少し湧いたのではないでしょうか。給水管、止水栓、蛇口などの給水用具はすべて給水装置となるため、使用者または所有者が責任を持って維持管理しないといけません。
ただし給水装置の中に含まれる水道メータは、水道局が検針のために設置するものなので、水道メータだけは水道局が管理します。
水漏れした際の個人の修繕区分は?
水道管が水漏れした時、修繕は誰が行うのかについて解説してきます。
水道本管の修繕
水道局が管理している水道本管が水漏れした場合は、水道局が修繕を行います。そのため、家の前で水道本管が漏れていても個人が修繕することはありません。
給水装置の修繕
水道法や給水条例を見ると、水道管はその使用者または所有者が責任をもって管理することと書いておりました。
これを見ると、所有している給水装置から水漏れした場合は自分で修理しないといけないのか…と思ってしまいますが、実は道路内から水道メータまでは市町村の水道局で無料修繕を行ってもらえます。
その理由は、以下の通りです。
・道路を個人で修繕することは困難だから
・有収率に影響するかから
それぞれ解説していきます。
道路を個人で修繕することは困難
もし道路上の給水装置で水漏れがあった場合は、必ず「道路管理者(市町村の道路課)への施行承諾」と「警察への道路使用許可」の提出が必要です。しかし、これらの承諾や許可の書類を個人で作成するのは難易度が高く時間もかかってしまいます。
また、道路を掘削する場合は重機が必要ですが、重機で修繕をすると費用が何十万~何百万になり、個人で払える金額を超えてしまいます…。
このような手続きや金額の支払いを個人ですることは大変なため、水道メータまでの道路上の水漏れは水道局が無料で修繕をすることになっております。
有収率に影響するから
有収率とは、「製造された水量」と「料金収入が得られた水量」の比率です。
水道局で作った水が、何のトラブルも無く個人などの水道メータをすべて通過すれば有収率は100%になります。有収率100%は無駄な水が一滴も無いため、水道局の経営としては非常に優秀です。
しかし、水道本管や給水装置のメータまでで水漏れがあった場合は、その分の水はメータを通過しないため、有収率は下がっていきます。
水道局としても有収率が下がると収益が下がっていくので、メータまでの水漏れ修繕は出来る限り行っていきたいと考えているでしょう。そのため、メータまでで水漏れが発見された場合は、すぐに水道局へ連絡するのが良いでしょう。
修繕区分まとめ
水道管の修繕区分についてわかりやすく書いてある絵がありましたので参考にして下さい。

給水装置は個人の所有物ですが、水道メータより1次側(道路側)については市町村の水道局が無料で修繕を行ってくれます。(水道メータより2次側(宅内側)は個人負担で修繕が必要)
ただしあくまで給水装置の修繕となるため、修繕箇所は簡易復旧となります。修繕箇所がタイルや大理石、芝生の場合は、元通り戻すことは出来ないのでその点は注意が必要です。
また、故意、過失による破損の場合は有料の修繕になるのでその点も注意が必要です。
まとめ
本記事の内容をまとめました。
・水道本管から分岐した装置は、すべて給水装置
・給水装置の維持管理は、基本的に使用者または所有者
・給水装置の修繕は、メータの1次側までは無料で水道局がする
「水漏れした時にすること」と「安全な修理業者を探す方法」については、以下記事もご参考下さい。